『松田 優 写真展:その夜の踊り子』を観る。

写真だけの展示会は初めて行ったが、すごく良い思い出となった。

この展示会は、キャノンギャラリー大阪で10月14日まで行われている。

写真展のコンセプトは、中国地方に唯一あったストリップ劇場の閉館に密着した、というものである。

紹介文に「全盛期には300軒ほどあったとされるストリップ劇場。」とあるように、かつてはありふれた風景の一つであった。しかし、時代の変化ととも劇場に足を運ぶ人は減り、法改正などもあって新しいストリップ劇場は作れなくなった。

今あるストリップ劇場が全て閉館すれば、『ストリップ劇場』という歴史は終わる。私たちは、そういった歴史の場所に今いるのである。

写真展は入口のところには、紹介文が書かれその下に、劇場が賑わっている写真と、取り壊されて更地されていっている写真が展示してあった。

そこから進むと、踊り子たちの楽屋の写真、舞台へ向かう階段の写真、舞台を終えた後の踊り子たちの写真、そして、劇場が取り壊されている写真と続いていた。

中でも私が、もっとも気を引いた写真は二つある。それは、楽屋から舞台に向かうまでの階段の写真と、鏡越しに笑っている踊り子の写真である。

階段の写真の中、その壁にはかつての踊り子たちが壁にキスをして無数に紅を付けた後が残っていた。出展者の方に聞くと、「この劇場では踊り子達が初舞台や最後の舞台といった節目などのときに壁にキスをしていく」のだという。その紅は、誰のものかはもうわからない。しかし、その時、そこに、確かにいた踊り子たちの❝痕跡❞だけが壁に残っている。その壁ももうないのであるが・・・。

次に、鏡越しに笑っている踊り子の写真であるが、❝笑っている❞というのはもしかしたら正確ではないかもしれない。たしかに、笑っていると表現できる。しかし、その顔は、諦めのようなものを含んだどこか曇った表情なのである。何故、この踊り子はこんな顔をしているのだろう。何が彼女をその表情にさせるのだろう。ストリップ劇場という独特の場所だからこそ、その人がそこにいる理由や、人生を考えてしまう。

考えてみれば、ストリップ劇場という所は不思議な場所である。人目を憚りつつ入る秘密の場所に、踊り子達が音楽に合わせて裸体を披露する。しかし、それで彼女たちが❝赤裸々❞になるわけではない。彼女たちの人生は秘められている。そして、その人生の一端が楽屋❝裏❞でわずかに吐露されるのだ。

この写真展は、この『ストリップ劇場』というものを端的表した展示会だった。

10月14日まで、キャノンギャラリー大阪で開催している。『ストリップ劇場』が何なのかを知りたいのであれば、この写真展に行くべきだろう、とも思う。

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